第520章 監視カメラの映像を要求する

数分後、柴崎知子はリビングに戻り、天野剛の真剣な表情を見て、落ち着いた様子を装って彼の向かいに座った。

「話してよ、どうしたの？また怠けたいの？」

「知子……」天野剛は姿勢を正し、真剣な眼差しで柴崎知子を見つめた。「昨夜のことは、全部わかっている。」

柴崎知子の体は突然硬直し、表情も少し気まずそうになった。

「なぜこのことを無視しようとしているのか分からないけど、僕は何も無かったふりはできない。」天野剛は深く息を吸い、おそらく知子を驚かせないように、より優しい口調で続けた。「ただ、君の本当の気持ちを知りたいんだ。」

柴崎知子は一瞬固まり、その後干笑いを浮かべた。「何を考えているって？まさか本気にしたの？タレントとマネージャーが関係を持つなんて、よくあることでしょう？あなたが酔っていたのは分かってるし、責任を取れなんて言わないから、ただあの夜のことは忘れてくれればいいの。」

その言葉を聞いて、天野剛の心は底まで沈んだ。次に口を開いた時、自分でも聞こえないほど小さな声になっていた。「そう？普通のことなんだ。」

「深く考えないで、みんな大人なんだし、お互いに必要なこともあるでしょう。」

「ああ、君はそう考えているのかもしれないけど、僕は自分のマネージャーと寝て、何事もなかったかのように振る舞うことはできない。君は僕の初めての女性だった。」天野剛は真剣に言った。「このまま一緒に仕事を続けることはできない。」

「それはどういう意味？」柴崎知子の声は、思わず震えていた。

「つまり、女性として僕と付き合ってみるか、それとも……何の関係もなくなるか。こんな複雑な状況は望まない。責任を取るためにこんなことを言っているんじゃない。ただ、君も僕のことを好きかもしれないと思ったから……」

柴崎知子は呆然として、何も言えなかった。

天野剛は少し笑って、何かを悟ったかのように立ち上がって出て行こうとした。ただし、出る前に一言残した。「考えがまとまったら、連絡してくれていい。」

「どこに行くの？」

「疲れた。休みたい。」天野剛はそう言って、そのままアパートを出た。

どこに行くのか、彼自身もよく分からなかった。心は混乱していた。それは知子の態度のせいなのか、それとも自分の衝動的な行動のせいなのか。