「姉さん、実は最近ずっと考えていたことがあるんだ」少し間を置いて、天野剛は続けた。「たぶん、僕は本当にお金を稼ぐ方が向いているんだと思う。だから、姉さんの映画が公開された後、12月8日の最後のファンミーティングで芸能界引退を発表しようと思っている」
実際、天野奈々にはよく分かっていた。天野剛は最初から芸能界には向いていなかった。なぜなら、彼は常に善良な性格を捨てきれず、しかも常に邪悪なものに遭遇してしまうからだ。
「よく考えたの?知子がどれだけあなたが音楽界の重鎮になることを望んでいるか、分かっているでしょう」
「よく考えたよ」
夏目楓と柴崎知子、この二人で十分だった。欲望が渦巻くこの世界で、これからの恋愛生活が偽りと隠し事で満ちることを、彼は望んでいなかった。
「自分で選んだ道は、正しくても間違っていても、這ってでも最後まで進まなければならない」