第588章 最も注目される賞

「では、オスカーアカデミー脚本賞受賞者で、国内最高の価値を持つ監督である中野風太先生をお迎えし、ご挨拶と本日の日本アカデミー賞の最初の賞の発表をお願いしたいと思います」

拍手が鳴り響く中、白髪まじりの老紳士が黒縁の眼鏡をかけ、キラキラと輝く授賞台にゆっくりと上がっていった。マイクの前で両手を組み、力強い声で話し始めた。

「お世辞は、もう十分に言われてきました。今回は、私からは多くを語りません。ただ一つ、私の心に強く残った興味深いことをお話ししたいと思います。今年の新人賞は、非常に競争が激しく、その注目度は今夜発表される他の賞を上回るほどです。これは日本アカデミー賞の歴史で初めてのことです」

「そこで、私はノミネートされた俳優たちの作品を見ました。霧島雛の『栄光』、伊藤ふみおの『舊部族』、佐藤リナの『緑の血の弾丸』、そして天野奈々の『奇夫』、さらには除名された新井光の映画作品も...」

「これらの映画を見終えた後、私は個人的にある作品に非常に惹かれました。もちろん、具体的にどの作品かは今は申し上げませんが、ただ一つ言いたいことがあります。それは...この映画を通じて、俳優という職業には、まだ魂を注ぎ込もうとする人がいることを見出したということです」

「だからこそ、私はその俳優を尊敬しています。彼女の真摯な姿勢は、私たち生涯を映画に捧げてきた者たちに劣らないものだからです」

「これくらいにして...それでは、第37回日本アカデミー賞の助演女優賞の受賞者を発表させていただきます。これが今夜最初に発表される賞となります。誰もが脇役から始まります。監督も脚本家も、新人から始まるのです。今日の助演女優賞受賞者が、いつの日か主演女優賞を手にすることを願っています」

「そして結果は...スクリーンをご覧ください!」

中野風太先生の言葉が終わると同時に、彼の背後の大スクリーンには助演女優賞のノミネート一覧が表示され始めた。スポットライトが五人のノミネート者に次々と当てられ、最後に一人に固定された。そしてその瞬間、スクリーンには助演女優賞受賞者の名前が表示された。

その合間に、天野奈々の目は偶然ある人物に止まった。その人物とは一度しか会ったことがなかったが、彼女の記憶に深く刻まれていた。

山田清。