会場では対立も演技も終わり、日本アカデミー賞は天野奈々の個人お見合い会のようで、どこに行っても彼女の名前が聞こえてきた。
その後、日本アカデミー賞で主演男優賞と主演女優賞が発表され、二人が壇上で受賞スピーチをしている時、栗原星に冗談を言われた。「天野奈々にこんなに注目を奪われて、気分は悪くないですか?」
「全然!」主演女優賞の受賞者は、トロフィーを抱えながら笑顔で答えた。「彼女の勇気に感服しています。私たち大多数が言えなかったことを、彼女は言ってくれました」
「だから、私は彼女を支持します!」
主演男優賞の受賞者も笑いながら言った。「このトロフィーを彼女に直接渡したいくらいですが、彼女には自分の力で賞を取る実力があると思います」
実際、天野奈々を好きな人と嫌う人の区別は非常に明確だ。好きな人は彼女の控えめな一面、努力家で人当たりの良さを見ることができ、嫌う人は、どんなに素晴らしい映画でも気に入らない観客がいるように、彼女のどこかしらに苦笑せざるを得ない、彼らが欠点だと思うものを見つけ出すのだ。
実際、ネットユーザーは天野奈々に何度も教訓を受けており、彼女の人柄も演技も、彼らの心の中では、それぞれ自分なりの答えを持っている。
しかし、天野奈々は作品数が少ないため、着実な実力で、より多くの人々を説得していくしかない。
授賞式が終わった後、すべての芸能人がホテルの会場から次々と退場する中、トロフィーを手にした安藤皓司と、不機嫌そうな北川東吾が自分の席の前に立ち、揃って天野奈々を見つめていた。
「おめでとう、奈々さん!」
「あなたもおめでとう」天野奈々は安藤皓司に向かってトロフィーを掲げた。
「奈々姉さん……」久しぶりの冬島香が赤い椅子の列を越えて天野奈々に抱きつこうとしたが、彼女のドレスに触れる前に、長い腕が彼女を引き戻した。
「彼女は今妊婦なんだ。もし強く抱きついてあかちゃんを傷つけたら、向こうの男があなたを生かしておかないよ」北川東吾は冬島香に警告した。
冬島香は天野奈々を一目見て、それから手を伸ばした墨野宙を見た。
天野奈々が妊娠してから、墨野宙は彼女から一歩も離れず世話を焼いているが、さらに深く測り知れない存在になっていた。
「大丈夫よ」天野奈々は急いで答えた。