第596章 清算

医師は天野会長の選択を不思議に思った。孫娘に対してこれほど冷酷な祖父を見るのは珍しかった。

しかし、これは家族の選択であり、医師が大きな責任を負う必要はない。ただ、天野茜と赤ちゃんを救助する際に最善を尽くせばよかった。

それに、祖父と孫の間にどれほどの恨みがあれば、実の祖父がこのような言葉を口にするのだろうかと、想像するのは難しかった。

それは、彼女が天野茜の憎むべき点を本当に知らなかったからだ!

……

さらに30分の焦りに満ちた待ち時間が過ぎ、今度は墨野玲奈も天野家から病院に駆けつけ、天野茜の現状を尋ねた。「まだ出てこないの?」

天野会長は椅子に座り、深い思考に沈んでいた。しばらくしてから、ようやく頷いた。「もしかしたら、出てこないかもしれない……」

「お父様……」墨野玲奈は驚いて天野会長を見つめた。会長が天野茜に対してここまで冷酷になれるとは、とても信じられなかったからだ。

「天の災いはまだ許せるが、自業自得は救いようがない」

会長の言葉が終わるや否や、手術室の自動ドアがゆっくりと開いた。医師が直接出てきて、会長と墨野玲奈に告げた。「危機は脱しました。ご家族の方々にはご安心いただけます。母子ともに無事です!ただし、赤ちゃんはまだ7ヶ月なので、保育器で管理する必要があります。看護師が処置を終えたら、無菌室で面会できます」

「ありがとうございます」

「母体は非常に衰弱しているので、今後は栄養補給に気をつける必要があります。看護師が病室まで案内します」

この言葉を聞いても、会長は無表情のままだった。というより、悪事を重ねてきたあの女のことを気にかけることを、自分に禁じていたのだ。

「お父様、天野茜に会いに行きませんか?」

「必要ない。もうすぐ奈々が来る。私は曾孫に会いに行く」

天野会長は天野茜にいかなる機会も与えるつもりはなかった。それは彼女が悪事を重ね、その罪状が数え切れないほどだったからだ。

墨野玲奈は頷いた。天野奈々が来るということは、彼女が天野茜と決着をつけるつもりだということだ……そのため、墨野玲奈も病室の女性のことには触れず、静かに会長の後に従った。これが天野家の子孫である以上、粗末に扱うことはないだろう。しかし……この子供が二度と天野茜と接触する機会を与えることは、絶対にないだろう。

……