第595章 赤子を守れ！

この数日。

芸能界のヘッドラインは、ほぼ天野奈々と彼女の日本アカデミー賞のオーディション映像に占領され、天野奈々の過去に関するニュースも次々と掘り起こされ、メディアが連日取り上げていた。

しかし、妊娠6ヶ月ほどの天野奈々は、日本アカデミー賞の当日夜の対応以外、ホテルを出てからは再び姿を消した……

とはいえ、彼女は完全に安静にしていたわけではなく、ある人物を注意深く観察していた……

その人物とは、天野茜だった。

天野茜は相変わらず我が道を行き、偽札を使って人々を騙し、見破られた時は妊婦という立場を利用して責任逃れをしていた。もちろん、それは彼女よりも厚かましい悪人に出会っていなかったからだが……

陸野徹が派遣した部下たちは天野茜の監視という任務を怠ることはなかったが、天野茜がここまで堕落している様子を見て、思わず嘲笑を浮かべた。

「奥様が数日間彼女を放っておくように言わなければ、とっくに手を出していたところですよ」

「そうですね。毎日詐欺を働いて、お年寄りや子供を騙すなんて、お腹の子のためにも徳を積むべきなのに」

天野茜が詐欺を働くたびに、この二人の若い男性が同額のお金を老人や子供たちに返していたが、今回は……

天野茜にはそんな幸運は訪れなかった。

彼女は小さなスーパーに行ったが、店主も妊婦で、しかも妊娠9ヶ月だった。

若者は騙されにくいので、天野茜はお金を投げ渡して商品を持って立ち去り、相手が金額を確認している間に足早に立ち去ろうとした。

その妊婦は天野茜が急いで立ち去ろうとする様子を不審に思い、お金を数えている時に偽札だと気付くと、すぐにお腹を抱えながら追いかけた。「待って！あなたのお金は偽物よ、待って……」

天野茜は小さなスーパーの近所の人々に囲まれ、逃げ道を塞がれた。妊婦もすぐに追いつき、天野茜の袖を掴んだ。「あなたが渡したお金は偽物です」

「嘘よ、私が渡したのは本物のお金よ」天野茜はすぐに反論した。「あなたたちは示し合わせて私からお金を巻き上げようとしているんでしょう。でも私にはお金なんてないわ」

天野茜の演技は、長い間の経験で磨かれ、完璧なものとなっていた。