天野剛は再び怪我を負いながら近藤家に向かい、フロントに入ると、受付の職員全員が固まってしまった。
「近藤社長を探しているんですが、戻ってきましたか?」
「社長は会議中です」受付はエレベーターの方を指さして言った。「天野さん、少々お待ちになりませんか?社長室に確認の電話を入れましょうか?」
「いいえ、直接上に案内してください。オフィスで待っています...」
「それは...」
「私と彼女の関係を考えれば、何か心配することがありますか?」天野剛は優しく忍耐強く二人に尋ねた。
受付は数秒間躊躇し、内心で葛藤しているようだった。その後、慎重にうなずいて「分かりました。天野さん、こちらへどうぞ」
天野剛は近藤青子が暴走することを心配していたが、予想に反して、社長室に入ると、近藤青子は数人の警察官と真剣に事件について協議していた。
海輝が既に秘密裏に処理していたにもかかわらず、近藤青子は正式に警察に届け出ていた。
「あなた、狂ってるの?怪我してるのに!」近藤青子は天野剛を見るとすぐに駆け寄り、ソファーに座らせた。
「心配だったんだ。近藤遠雷を見つけたら、頂上決戦になるんじゃないかと」
「だから警察に頼んでるでしょう?」近藤青子は彼を睨みつけ、秘書を呼んだ。「秘書に病院まで送らせます」
「大丈夫だよ、病院でも寝てるだけだし、動かなければいいんだ。君たちの話を続けて」
天野剛は移動する気はなかった。それに、近藤青子のオフィスは快適で豪華な内装で、病院よりずっと居心地が良かった。
近藤青子は彼に対して為す術がなく、ため息をつくしかなかった。秘書に天野剛の世話を頼み、自分は警察官たちの元に戻った。
「近藤遠雷は祖父との関係が良くないので、祖父に助けを求めることはないでしょう。彼と親しい友人たちの名前はここに書いてあります。先ほど臨時会議を開き、近藤遠雷に近藤邸がまだ彼の名義だと思わせる煙幕を張りました。きっと彼は確認のために誰かに連絡を取るはずです。会議後、これらの人物から電話がありました。その中の誰かが彼に情報を流していると疑っています」
「これらの人物を重点的に監視してください。きっと何か分かるはずです」
近藤青子が仕事を処理する時の様子は、まさに凛とした社長の風格があり、迅速かつ的確に物事を進めていた。