第541話 私の1票を取り消せば、それでいいのか?

天野奈々は天野家の会長であり、たとえ女優をやめても大きな影響はないのですが、継母のような厚かましい人に出会うと、彼女も日本アカデミー賞に全力を尽くすでしょう。

そう、彼女の継母は『生存』の主演女優で、彼女より半歳年下なのに今は継母となっている女性、田中翠です。

「近藤あおい、私はあなたの目上の人間だということを忘れないでください。敵を間違えないでください」

「私の人生で最大の敵は、今目の前にいますよ、田中さん。どう思います?」そう言って、近藤青子はようやく腕を組んで立ち去りました。もちろん、天野奈々の味方になると言ったのも嘘ではありません。なぜか、彼女は天野奈々と意気投合し、すぐに相通じ合える感覚を見出すことができました。

そのため、彼女はすぐに近藤家の人に電話をかけ、天野奈々の連絡先を尋ねました。

近藤青子にとって、この世界で田中翠以上に恥知らずな第三者はいないでしょう。近藤奥様になるために、あらゆる手段を使い、父親の機嫌を取るために日本まで行って、あの下品で表に出せないようなことまで学んできたのです。

おそらく演技が得意だったからこそ、田中翠は本当に女優になり、確かに演技力は悪くありませんでした。

また、田中翠の手段が陰湿だったからこそ、誰も眼中に入れていませんでした。もちろん、天野奈々もその中に含まれています。

以前の投票操作も、彼女と無関係ではありませんでした。

このように悪意すら隠そうとしない人物が、なぜか父親を夢中にさせていたのです。

……

すぐに、新人女優賞部門の二回目の投票時間となり、今回は全員の表情が特に厳しく、まるで人生の大事を考えているかのようでした。

「皆さんの多くは、昨日の答えをすでに心に決めていることは分かっています。しかし、せめて態度を示してください」

「私は前回の投票を維持します」

「私も同じです」

「私も……」

その場にいた約十人が次々と、結果に変更はなく、以前の選択を維持すると表明しました……

しかし、これは天野奈々が日本アカデミー賞の新人賞を完全に逃すことを意味するのでしょうか?ノミネートすらできないということでしょうか?