日本アカデミー賞は権威のある正規の賞であり、内部の論争を表に出すことなど決してありえないと、天野奈々はいわゆる業界関係者からのリークなど信じていなかった。
歴代の日本アカデミー賞は激しい競争を経て決まってきたが、主催者側は毎回、選考の激しさを収めてきた。しかし、なぜ彼女の時だけ、大衆の前で判断されることになったのか?このままでは、受賞しても、しなくても、批判の的になるだろう。
受賞できなければ、あれだけ大騒ぎしたのに結局何も得られなかったと、笑い者にされる。
受賞すれば、バックにいる大物の力を借りただけだと言われ、賞の価値も認められない。
しかし、このようなジレンマは、本当に偶然なのだろうか?
光が強ければ強いほど、その影も濃くなる。この道理を、天野奈々は十分理解していた。