第539章 当然の公平

「この立場で審査員を務めている以上、プロとしての目と客観性を持って臨んでいただきたい。審査すべきは俳優の演技力であって、キャリアではありません」

「ここまで話して、それでもなお天野奈々を落とすというのなら、私は異議を申し立てませんが、一つ条件があります。皆さん一人一人に、筋の通った理由を示していただきたい。そうでなければ、私も、そして世間も納得できません」墨野様は腕を組んで背もたれに寄りかかり、「では、最初の方から、本音をお聞かせください」

一同がしばらく躊躇した後、ベテランの映画評論家が眼鏡を押し上げながら墨野様に向かって言った。「日本アカデミー賞は国内最高峰の芸術賞であり、最も権威のある賞です。私たちが選ぶべき人物は、優れた演技力だけでなく、人々の尊敬も得ていなければなりません」