第622話 それは彼女が自業自得だ

清水星華は大作に出たがっていたが、安藤皓司がどれだけ全力を尽くしても、今や誰が彼女を起用しようとするだろうか？

たとえ起用する人がいたとしても、彼女はすでにチャンスを逃してしまった。

最後に、安藤皓司は清水星華を連れてDK社の面接に行った。

もし誰か彼女にチャンスをくれる人がいるとすれば、それは森口響だけだった。もちろん、森口響は天野奈々の顔を立てて、DKエンターテインメントに清水星華を推薦したのだ。

「森口響の新作映画『巨獣』が今キャスティング中で、ヒロインがまだ決まっていない。試してみたらどうだ」

「ヒロイン？」清水星華は自分の鼻を指さし、明らかに信じられない様子で、「私にはヒロインは無理です...」

「ヒロインのスタントマンだ」安藤皓司は腕を組んで、平静に説明した。「森口響の主演作品だぞ。天野奈々のように彼の認めを得られると思うのか？ヒロインのスタントマンでさえ、争奪戦になるんだ...」

「前はアクション俳優になりたいと言ってスタントマンを断り、今度はスタントマンをやらせようとしたらアクション俳優になりたいと言う。一体何がしたいんだ？」

清水星華は後ろから安藤皓司を見つめ、彼の背中を見ながら、突然心が苦しくなった。

「今こんな状況になって、誰かが雇ってくれるだけでもありがたいことだ...」

この言葉を聞いて、清水星華は急に足を止めた。「他人に侮辱されるのは十分です。あなたまでそんな酷いことを言うの？」

安藤皓司も足を止めたが、振り向かなかった。「もし君が、いつまでもお嬢様の気まぐれを甘やかしてほしいなら、永遠にアクション俳優とスタントマンの間を行き来することになる。現実を見なさい。この業界で純真なだけじゃ生きていけないんだ」

すぐに二人はDKの責任者に会ったが、相手の二人を見る目つきに、清水星華は非常に不快感を覚えた。

「響兄さんからの依頼なら、私も何も言うことはありません。この機会を与えましょう。ただし、一度きりですよ。ついてきてください」

安藤皓司は顎で清水星華に相手について行くよう合図し、自分は外で待つことにした。