第632章 腕は自分で傷つけた!

椛木千鶴はミロホテルでの取引を午後2時に予定していたが、興奮のあまり30分以上も早く到着していた。

ホテルの設備をチェックし、尾行や盗撮の形跡がないかを確認するためだったが、案の定、何も見つからなかった。

天野奈々を破滅させるためなら、椛木千鶴はどんな代償も厭わないようで、3000万円を使うことにも全く心が痛まなかった!

ホテルには天野奈々がモデル時代に撮影した広告がまだ掲示されていたが、椛木千鶴はそれを見て、軽蔑的な笑みを浮かべた。すぐに天野奈々が必死に築き上げたものすべてを一瞬で崩壊させられるからだ。

……

良い芝居になるはずだが、天野奈々は外出を控えていたため、自宅で椛木千鶴が得意げな表情から醜態をさらす様子を生中継で見ることにした。

「奈々さん、すべての準備が整いました」電話で山本修治が天野奈々に伝えた。「市内最大のスクリーンと接続済みで、いつでも生中継を開始できます」