第615話 なぜスタントマンと契約する必要がある？

「私は強いし、戦うことを恐れないから！」

スタントマンというのは、芸能界では常に切ない存在だった。特にアクションのスタントマンは最も過酷で、危険度が最も高いだけでなく、顔を出す機会も全くなく、スターになるチャンスはほとんどない。

業界ではスタントマンの怪我の話がよく聞こえてくる。軽ければ障害が残り、重ければ命を落とすこともある。それなのに、手にする報酬は俳優の千分の一にも満たない。

清水星華の言葉を聞いて、安藤皓司は思わず彼女の前に歩み寄り、見下ろすように尋ねた。「全身保険に入ってるのか？」

「いいえ……」

「それなのによくそんな大胆なことが」

星華は皓司を押しのけ、軽く鼻を鳴らした。「私がスタントマンをやっていた時、あなたはどこにいたのかしら」

「生意気な小娘だな……」

「私は7歳からスタントを始めたのよ」星華はかっこよく言い放った。「それに、あなたって変な人ね。この前まで私に演技をしろって付きまとってきたのに、今度は私が来たら、いろいろと難しいことを言い出して」

「俺が言ったのは演技をしろということだ。顔を出す役だ。スタントマンなんて仕事は他の人に任せておけ。お前を見ろよ、力もないのに……」安藤皓司の言葉が終わらないうちに、星華は彼の肩をつかみ、見事な背負い投げを決めた。動きは清潔で流暢で、一気呵成だった。

中野風太は星華の動きに驚いたが、そんな小柄な体格でこれほどの爆発力を持っていることに感心せざるを得なかった。

「採用してくれる？」星華は皓司を押さえつけながら尋ねた。

「聞くが、どうしてもスタントマンをやりたいのか？」安藤皓司は床を叩きながら振り返って星華に尋ねた。

「スタントマンしかやらないわ」

なぜなら彼女にはスタントマンしかできなかった。顔を出す役では、すぐに体が硬直し、緊張で手足がぎこちなくなってしまう。だから、彼女は無名のスタントマンでいることを選んだ。

「好きにしろ」安藤皓司は説得を諦めた。彼女とそれほど親しくもないのに、他人の決定に口出しできるわけがない。「スタントマンをやりたいなら、俺を倒したところで大したことじゃない。もし我々が用意した武術の達人に勝てたら、ヒロインのスタントマンを……いや、ヒロインにスタントマンは必要ない」

「どうして？」