第690話 彼女は私を困らせたいだけでしょう?

天野奈々は初めてこんなに自信に満ちた人を見た。柴崎小百合は彼女の限界を超えていた。

そこで、彼女は両手を広げ、成り行きを見守ることにした。

「あなたのそのクールな態度が本当に嫌い。実は内心では悔しくてたまらないんでしょう?」

「まだ若いのね...」

この言葉を聞いた柴崎小百合は椅子を蹴り倒して立ち去った。天野奈々が彼女の心を正確に見抜いていたからだ。柴崎小百合にとって、天野奈々が自分を眼中に入れていないことほど、辛いことはなかった。

すぐに山本修治が近づいてきて、天野奈々に尋ねた。「大丈夫でしたか?」

「彼女に何ができるというの?」天野奈々は山本修治に問い返した。

「でも、妊娠中なのに...」

「妊娠中だろうと何だろうと、柴崎小百合には私に勝つ可能性はもうないわ」天野奈々は真剣に言った。「それに、彼女が私を軽視している感じが大好きなの」