清水星華は飯島杏と話す気もなく、直接安藤皓司に電話をかけた。「ちょっと問題が起きたの。来て処理してくれない?」
安藤皓司は中野監督の家から出たばかりだったが、清水星華からの電話を受けるとすぐにマンションへ向かった。到着すると、清水星華がソファで足を組んで座っており、飯島杏がごろうくんを慰めている様子が目に入った。
「安藤さん、来てくれてよかった。早くごろうくんを説得してあげてください。彼が星華さんのゲーム機を壊してしまって、星華さんによると、この機械は300万円もするそうです。ごろうくんには払えないから、家を売るしかないって…」
飯島杏が弱者を演じているのは、清水星華も安藤皓司も、そして飯島杏自身も分かっていた。
安藤皓司はゲーム機を一瞥し、清水星華を見た。二人の視線が合い、星華の瞳には明らかに「助けようとしたら承知しないわよ」という意思が込められていた。