第669章 何か怪しいと思っているの?

深水藍華が噛まれたのは事故だと確認されたものの、天野奈々の心の中には多くの疑問が残っていた。

突然現れた柴崎小百合のことや、この突然起きた出来事のように。

天野奈々は柴崎小百合の経歴を見たが、実際、彼女が突然現れたというのは少し酷な言い方だった。天野奈々が知らなかっただけで、それは彼女があまり関心を持っていなかったからだ。

人気の楽曲で、日韓の音楽チャートで1位を獲得したものの半分以上が彼女の手によるもので、作曲の才能は抜群だった。

脚本家としてはさらに優れていた。有名な作家出身で、後にテレビドラマや映画の脚本の改編に招かれ、今では脚本家界隈で認められた才女となっていた。

歌唱力も素晴らしいと言われている。

このような才女は当然、海輝のターゲットとなったが、しかし……

柴崎小百合は才能があるものの、プライドも高かった。その半分は家庭環境によるもので、残りの半分は彼女の天才的な能力によるものだった。

柴崎小百合の作品を見終えた天野奈々は長い間黙っていたが、密かに山本修治に連絡を取った。「マンション周辺の監視カメラは確認しましたか?」

「見ました」山本修治は声を低くして天野奈々に答えた。深水藍華がちょうど眠りについたばかりだったからだ。

「私にも見せてもらえますか?」天野奈々は提案した。

「何か不審な点があると思っているんですか?」山本修治は突然天野奈々の言葉の意図を理解した。「そんなことはないはずです。何度も確認しましたが、今回の件は確かに事故です。」

「見せてくれればいいんです」天野奈々は主張した。彼女は山本修治の能力を疑っているわけでも、深水藍華への心配を疑っているわけでもなかった。むしろ夫婦だからこそ、山本修治が感情的になることを心配していた。

山本修治は天野奈々を説得できず、監視室から取り寄せた映像を彼女に送った。「もし新しい発見があったら、すぐに教えてください。でも、実際にはあなたが考えすぎているだけだと思います。」

考えすぎかどうかは、見てからにしよう。

天野奈々は映像を受け取ると、パソコンではなく墨野宙の書斎でプロジェクターを使って慎重に観察した。

映像では、深水藍華は車を直接地下駐車場に入れず、警備員に預けていた。実際の理由は、芽衣が地下駐車場の匂いを嫌い、下の暗さも怖がっていたからだった。