第693章 恐ろしすぎる

おそらく相手の言葉があまりにも重く、耳障りだったため、丹野茜は突然大股で前に出て、柴崎小百合と向かいの数人との間に距離を作った。

「もういい。うちのタレントのことは、部外者がとやかく言う筋合いじゃない」

柴崎小百合は大きな屈辱を感じた。恥ずかしさと怒りで地面に穴があれば入りたい気持ちだったが、対照的に向かいの天野奈々はというと、平然とした表情で、彼女を全く眼中に入れていなかった。

「あなたのタレントが臨月の妊婦まで困らせなければ、誰も何も言わないわ」

「あなた...」

柴崎小百合は丹野茜まで辱められたくなかったので、ただ怒りの目で天野奈々を見つめ、震える声で言った。「もういいでしょう?」

その言葉を聞いて、天野奈々は彼女を擁護した二人の女優の肩を軽く叩いた。「ありがとう、大丈夫よ。少なくとも、こういう場では何もされないから」

当事者本人が気にしないというなら、二人もそれ以上追及する必要はなかったが、それでも笑顔で天野奈々に言った。「どういたしまして」

そう言って二人は立ち去り、トイレの入り口には天野奈々と丹野茜だけが残った。

柴崎小百合は目を赤くし、上下する胸から、必死に怒りを抑えようとしているのが分かった...

「ちょっと外で息をつきます」そう言って、柴崎小百合は歩き去った。天野奈々と一秒でも長く向き合うのが息苦しかったからだ。

丹野茜は柴崎小百合が去るのを見送り、周りを確認して二人きりになったことを確かめてから、天野奈々に言った。「外であなたは人の心を操るのが上手いって噂があるけど、本当だったのね。天野さん、あなた本当に恐ろしい。自分の人気が柴崎をはるかに超えているのを知っていながら、こんな場で彼女を辱めるなんて」

「あなたはどうなの?私の知名度が彼女より上だと知っていながら、注意もせず止めもせず、好き放題させて。何を考えているの?」天野奈々は顎を上げて問い返した。「私から見れば、あなたは彼女が恥をかくのを見たかったんでしょう」

「あなたみたいに、周りの人まで計算に入れていると思わないでください。今日、柴崎を辱めたことで、あなたの話題作りに利用された件は清算されました。これで借りも貸しもありませんよ...」そう言って、丹野茜は立ち去ろうとしたが、天野奈々の横を通り過ぎる時、冷笑するような声が聞こえた。