天野奈々がそれほどはっきりと言ったにもかかわらず、実際に柴崎小百合を告発しようとすると、丹野茜は彼女との昔の友情を思い出してしまう。感情的になりたくないと思っても、両足を失いかけたにもかかわらず、心の奥底では柴崎小百合を告発したくないのだ。人とはときにこうも愚かなものだ。
時には柴崎小百合の皮を剥ぎ、筋を抜いてやりたいと思うこともあるのに!
天野奈々はソファから柴崎小百合を横目で見て、彼女の目に複雑な感情が浮かんでいるのを見つけると、軽くため息をついた。「まだ考える時間が必要みたいね。でも、警告しておくわ。柴崎小百合のやったことは、いずれバレるわ」そう言って、天野奈々はソファから立ち上がった。しかし、病室のドアまで行く前に、丹野茜が突然尋ねた。
「あなたは柴崎小百合をどれほど憎んでいるの?」
「行動で示してあげるわ、どれほど憎んでいるかを」天野奈々は振り返らずに答え、そのまま立ち去った。
丹野茜はようやく緊張が解けた。この瞬間になって初めて、天野奈々と向き合うことが、どれほど怖く、心細かったのかを実感した……
帰り道で、墨野宙は天野奈々を抱きしめ、彼女のお腹を守るように手を添えていた。まるで少しの振動も与えたくないかのように。
「丹野茜との話は上手くいかなかったの?」
「ええ、丹野茜はまだ柴崎小百合への未練があるみたい」天野奈々は答えた。「でも、良心があるのは良いことよ」
「丹野茜にはあるかもしれないが、柴崎小百合にはないだろう!」
柴崎小百合に良心があれば、老人や子供まで巻き込むような非人道的な計画は立てなかったはずだ。
「丹野茜はいずれ柴崎小百合を告発するわ」丹野茜との話し合いは上手くいかなかったものの、天野奈々はこの結論に確信を持っていた。丹野茜が今口を閉ざしているのは、まだ傷が浅いからだ。まあいい、彼女たちに自滅させておこう。というより……柴崎小百合に丹野茜への策略を続けさせておこう。
……