第708話 後のために道を残しておけば、また会える!

天野奈々の予想通り、柴崎小百合は翌朝早くに丹野茜の部屋に再び現れた。丹野茜は柴崎小百合が何のために来たのかを知っていたが、実際に会ってみると、想像していたほど彼女を憎めなかった。事件が起きた最初の日に、自己保身のために見捨てられたにもかかわらず。

「茜さん、今、あなたの助けが必要なの……」金井和夫は既に完璧な広報戦略を立てていたが、柴崎小百合が最も心配していたのは、丹野茜がこの計画の弱点になることだった。そのため、彼女は世間から嫌われ、頼る人もいない人のように装った。

「今の私に何ができるというの?」丹野茜は自嘲気味に言った。

「私を倒すために、天野奈々は必ずあなたを探しに来るわ。でも私のキャリアは既に底をついているの。最後の復活のチャンスまで失うわけにはいかないの。だから、東京を離れて、誰にも見つからないようにしてくれない?誓うわ、以前のような状況に戻れたら、必ずあなたを私の側に呼び戻して、大切にするから。」

丹野茜は柴崎小百合の巧みな言葉に惑わされることなく、表情は相変わらず淡々としており、むしろ冷たさすら感じられた。「金井社長は、既にあなたの逃げ道を用意しているんでしょう?」

柴崎小百合は一瞬戸惑い、作り笑いを浮かべた。「どうしてそう思うの?」

「それに、天野奈々は既に私を訪ねて来ました。」丹野茜は平静に言った。「天野奈々はあなたを告発するよう私に頼みましたが、私は断りました。私たちの過去を思い出したからです。大学時代から今まで一緒に頑張ってきた仲間だから。たとえあなたが極悪非道な行為をしたとしても、私にはあなたを切り捨てる勇気がないんです。」

「天野奈々があなたを訪ねて来たの?」柴崎小百合は丹野茜の気持ちには全く関心を示さず、天野奈々が既に来ていたという重要な点にだけ注目した。

だから、彼女は当然丹野茜を信用しなくなった……

一片も信用しなかった。

「ええ、昨夜来ました。」

「天野奈々が提示した条件は、さぞ魅力的だったでしょうね?」柴崎小百合は突然慌てだした。長年のパートナーを手にかけることになるのだろうか?

「あなたは今、私をどうやって始末しようか考えているんでしょう。」丹野茜は彼女のことをよく知っていたからこそ、その心中を見透かしていた。「あなたの心の中に、少しでも躊躇いがあるのかしら。」