第721章 あなたが返すのか、それとも彼女が返すのか?

「調査は済んだのか?」海輝の社長室の窓際で、墨野宙は外の景色を眺めながら、後ろにいる陸野徹に尋ねた。

「間違いありません」陸野徹は答えた。「柴崎お祖父様の目には、柴崎小百合は最も誇れる孫娘で、非常に才能があり、純粋で優しい人物です。芸能界に入ることには反対でしたが、それでも孫娘への愛情は変わりません」

「その老いぼれは、自分の孫娘が悪事の限りを尽くしていることを知らないのか?」

「柴崎小百合が知らせるはずがありません」陸野徹は思わず笑いながら答えた。

「招待状を送れ。そのお祖父様に会ってみたいものだ」墨野宙は言い終わると、振り向いて机の上に積み重なった書類に目を向けた。「それと、特に重要でない事は、今後すべて山本修治に任せろ」

「承知しました」

墨野宙が直接柴崎お祖父様に会うというのだ!

直接!

陸野徹は墨野宙が何をしようとしているのか分からなかったが、彼の性格からすると、柴崎お祖父様は、きっと厳しい目に遭うことになるだろう。

……

柴崎お祖父様は墨野宙が人を遣わして招待してくるとは思ってもみなかった。墨野宙が会いたがっていると聞くと、秘書に向かって笑いながら言った。「この墨野宙というのは、所詮芸能プロダクションの社長に過ぎない。あんな者が私に会いたがる人の列は、どこまで続いているか分からないほどだ。会わん!」

「長官、お会いにならないわけにはまいりません」秘書は腰を曲げ、柴崎お祖父様の耳元で小声で何かを告げた。老人はそれを聞くと、たちまち激怒して机を叩いた。

「何たる無礼!」

「事態を悪化させないためにも、長官はこの墨野宙にお会いになった方がよろしいかと。もう退職なさっていて、現在は顧問としてお仕事を続けていらっしゃる身。以前のように物事を処理するわけにはまいりません。後々の禍根を残さない方が」

柴崎お祖父様は数秒黙り込んだ後、最終的にうなずいた。「では、手配を頼む」

柴崎お祖父様は一生を軍人として過ごしてきた人物だけに、当然プライドの高い人物だった。しかし墨野宙はそういった人物の性格をある程度把握していたので、陸野徹を通じて秘書に一言伝えさせた。