帰り道で、柴崎小百合は怒りを抑えきれず、金井和夫に車を止めさせ、道端の花々を荒らし始めた。
金井和夫は彼女の後ろについて行き、花で八つ当たりをする彼女を止めようとして「そんなことはやめて...」と言った。
「今じゃ八つ当たりする権利もないの?私のマネージャーで、一番の親友が、私に内緒でデビューして、今じゃ私より将来性があるなんて、ちょっとぐらい発散させてよ!」柴崎小百合は振り向いて、金井和夫の胸を叩きながら言った。「全部天野奈々の策略だってわかってる。私たち姉妹を仲違いさせて、漁夫の利を得ようとしてるのよ...なのに、丹野茜のあのクソ女ったら、そんなの信じ込んでるなんて!」
「どうあれ、丹野茜のデビューは既成事実だ。受け入れてみたらどうだ?」
「どうやって受け入れろっていうの?大学の頃から私の影だった人間が、突然私より人気者になるなんて、どうやって受け入れろっていうの?」柴崎小百合は通りで叫んだ。
通行人の注目を避けるため、金井和夫は柴崎小百合をスポーツカーに乗せ、柴崎家まで送った。
しかし、柴崎小百合は家に帰っても発狂し続け、柴崎お祖父様に対しても良い顔一つ見せなかった。
「どうしたんだ?」お祖父様は訳が分からない様子だった。
金井和夫は仕方なく溜息をつき、ただ気分が悪いだけだと言った。
お祖父様は頷いて、金井和夫に手を振りながら「もう慣れているよ、よろしく頼む」と言った。
柴崎小百合の性格は二人ともよく分かっていた。この世で誰一人として、柴崎小百合に損をさせることはできない。彼女は誰のことも考えず、誰にも譲歩することはない。
今、丹野茜がデビューしたことを、彼女が納得できるはずがない。
少し時間をかけて、金井和夫は今夜起こったことを全て柴崎お祖父様に話した。お祖父様は話を聞き終わると、思わず冷笑して「まさか、あの茜がこんなに野心的だとは。天野奈々と同じように、少し懲らしめてやらないとな」と言った。
金井和夫は黙っていた。柴崎お祖父様は天野奈々の映画に干渉できても、丹野茜のCDデビューには干渉できないだろう。結局は異なる分野の人間なのだから。
それに、お祖父様を手伝った人たちも、彼のためにもう一度リスクを冒すとは限らない。
「出世したつもりかもしれんが、雀は所詮雀だ!新しい服を着たところで、鳳凰にはなれん!」