第762章 これが木村いずみだ!

天野奈々は男性主役が誰なのか知りたかったが、表情には出さなかった。共演シーンを撮影する時には必ず会うことになるので、時間の問題だと思っていた。

天野奈々にはマネージャーもアシスタントもいないことを知っているため、スタッフは彼女に特別な配慮をしていた。中にはそれを不思議に思うスタッフもいた。

「あなたは今こんなに人気があって、何でも手に入るのに、どうして良いアシスタントを雇わないの?他のトップスターを見てごらん。みんな二人のアシスタントと四人のボディーガードを付けているのが当たり前なのに、あなたは何でも自分でやっているじゃない。」

撮影所に弁当を届けるおばさんは、天野奈々の弁当を受け取りに来る人がいないのを見て、自ら届けてくれた。

天野奈々は食べながら、心が温かくなるのを感じた。

「私一人で大丈夫です。特別なケアが必要なところはないんです。おばさんが優しいだけですよ。」

「まあ、あなたみたいに誠実な人は最近珍しいわ。たくさん食べなさいね。」

天野奈々はアシスタントが必要ないわけではなかった。ただ、柴崎知子の件があってから、必要性を感じなくなった。特に二人のあかちゃんを産んでからは、一人でも特に困ることはないと感じていた。

天野奈々は微笑んで、おばさんの好意を受け入れた。その後、スタッフの驚きの声が聞こえてきた。「男性主役が来たらしいよ!男性主役が入ったって!」

「誰か見た?」

「人から聞いただけよ。午後には会えるんでしょ?」

確かに、午後には...二人の共演シーンがある。天野奈々は、この人がずっと現れないはずがないと思っていた。

「すごい!楽しみ!」

食事の後、天野奈々は撮影現場で台本を読んでいた。午後のシーンは重要で、まず男性第二主役との演技があり、その後男性主役とほぼ決裂するシーンがあるため、全神経を集中させていた。

これは彼女と皇暁との最初の共演シーンでもあった。実際、彼女は少し期待していた。皇暁は不真面目な性格だが、演技の面では申し分なかったからだ。

すぐに、天野奈々と皇暁は最初の共演シーンの撮影を始めた。

皇暁の役柄は、常に女性主人公の側にいる設定だった。誰もが彼を小宦官だと思っていたが、実は他国の王子で、女性主人公の側で長年潜伏していたのだ。彼の女性主人公への感情は複雑で変化に富んでいたが、日常的には明るい存在だった。