第791章 私と天野奈々は偽装結婚ではない

「どうしたの?私の理解が間違っていなければ、貴院から伝わってきた話では、私と院長はとても親しいはずなのに、林院長は私に会いたくないようですね?」墨野宙は笑みを浮かべながら林院長に言った。

林院長は躊躇した末、ついに部屋に入り、墨野宙の向かいに座った。

しかし、座ってからも、彼は全身が落ち着かない様子だった。それは他でもない、墨野宙の周りに向けられた黒々としたカメラのレンズのせいだった。

それに、墨野宙と向き合うだけで、一目見ただけで強い警戒心を抱かせるほど、彼は危険な存在だった。

「墨野さんが私に会いたいのなら、こんな大げさなことをする必要はないのですが……」

「こんな大げさなことをしなければ、今、林院長にお会いできなかったでしょう」墨野宙は意味深な言葉を残した後、表情を冷たくし、少し厳しさと危険な雰囲気を帯びて続けた。「私はただ、海輝が貴院に一体何をしたのか、なぜあなたたちがそれほど恐れて、医師を解雇するまでに至ったのか知りたいだけです」

「それは……」

「外では、海輝があなたたちに圧力をかけたと噂されています。林院長、本当に海輝はあなたに圧力をかけたのですか?志村ドクターの話によると、私たちは汚い取引をしたそうですね」

「それを聞いて、私は怒りを覚えました。私の娯楽帝国が、一人の分別のない医師を抑え込むために、誰かと取引をする必要があるとでも?」

「個人的に、志村ドクターにはそこまでの価値はないと思いますが、林院長はどうお考えですか?」

林院長は非常に窮屈な思いをした。なぜなら、これらの話が外に漏れるとは思っていなかったし、まして墨野宙が直接彼を訪ねてくるとは予想もしていなかったからだ。これは全くの根も葉もない話だったのに、今、現場を押さえられて、どう答えれば自分の面子を保てるのだろうか?

「志村ドクターの誤解だと思います……」

「では林院長、なぜ志村ドクターを解雇したのか説明していただけますか?」

「それは……」林院長は即座に固まった。

「答えられませんか?大丈夫です、私が代わりに答えましょう」そう言って、墨野宙は直接携帯電話を取り出し、録音を再生した。

全メディアの前で……