第790話 墨野宙に罪を被せる？

「日本アカデミー賞の授賞式がもうすぐ始まるけど、誰かが意図的に天野奈々を陥れようとしているんじゃないかしら」

「どう考えても、今回の誹謗中傷は度が過ぎているわ。それに、これは家庭の問題でしょう。子供が病気になって、夫婦が心配するのは当然なのに、医者に裏切られるなんて、本当に気の毒だわ」

「もう少し様子を見てみましょう。もしかしたら、展開が変わるかもしれないし」

最近の芸能界では、何かニュースが出ると、真相が分かるまでに数日かかるようになった。是非の判断は、もはや表面的には難しい。

しかし、天野明日野のこの空気を読まない発言は、確かに志村碧の怒りを引き起こした。

母親が子供の面倒を見るのは、当然のことだ。

医者が母親について二言三言言ったところで何が悪いの？そんなに傷つくの？受け入れられないの？

「幼児は抵抗力が弱く、軽症から重症まであり得て、深刻な場合は命を落とすこともある。どうして重病と言えないの？しかも、何度も病気になっているのよ」

「私は両親に子供の面倒を見てほしいと言っているだけで、常に過保護にしろとは言っていない。入院するからには必ず病気があるはずで、そんな時に子供に愛情を示せないなら、いつ示すの？」

「それに、天野奈々が自分の息子を気にかけていないのは事実で、私は嘘を言っていない。なぜ最後には私が自分のイメージに気をつけるべきだという話になるの？」

「私は正々堂々としているわ。むしろ、向こう側の天野奈々の姉として、自分の家族の味方をするのは当然でしょう？」

……

「この馬鹿は何を言ってるんだ？」産褥期の中村さんでさえ、志村碧の再インタビュー動画を見た後、思わず罵声を上げた。「この医者の頭は豆腐でできているのか？」

「さあね。とにかく、この大騒動は芸能界から医学界にまで広がってしまったね」陸野徹は中村さんの隣に座り、果物の皮を剥きながら答えた。

「天野奈々の日本アカデミー賞に影響はあるの？」

「何の影響があるというんだ？」

中村さんはそれを聞いて、やっと安心したように頷いた。「影響がなければいいわ」

しかし、事態がここまで発展した以上、墨野宙が相手に教訓を与えなければ、彼女は自分が誰を怒らせたのか、まったく理解できないようだ。