第776章 病気の墨野宙

『生存者』の撮影環境は、明らかに非常に過酷なものになるため、天野奈々はあかちゃんの世話をする傍ら、すべての時間を自分の体を鍛えることに費やしていた。そのため、彼女の状態は日に日に健康的になり、腹部には腹筋までくっきりと見えるようになっていた。

白川結の一件が過ぎ去った後、東京の芸能界は徐々に平穏を取り戻していった。

天野奈々は役作りの準備をしながら、定期的にファンに近況を報告していた。

しかし『生存者』の撮影開始一ヶ月前、長期の疲労の蓄積により、墨野宙は最近耳鳴りに悩まされていた。

墨野宙は意図的にそれを隠していたため、天野奈々は当然知らなかった。陸野徹は育児休暇を取っていたため、墨野宙の状態を知っているのは彼自身だけだった。

その夜、二人のあかちゃんに授乳した後、天野奈々は墨野宙の後ろに立って、最近の清水星華の父親の件について話そうとしたが、墨野宙は前代未聞のことに反応を示さなかった。天野奈々が不思議に思って二度呼びかけたが、墨野宙はまったく聞こえていない様子で、ベビーベッドの横でそのまま眠り込んでしまった。

天野奈々はその様子を見て、心が痛んだ。

外では、墨野宙は海輝の意思決定者として、朝から晩まで数え切れないほどの案件の決定を迫られていた。家に帰れば二人の子供の父親として、いつでも面倒を見なければならない。天野奈々が数時間おきに授乳するときも、彼は常に傍にいて、一度も欠かしたことがなかった。

疲れているのだろうか？

天野奈々は思わずあかちゃんを置いて、墨野宙の側に歩み寄った。しかし彼の体に触れた瞬間、天野奈々は墨野宙が単に眠り込んだだけでなく、全身が熱を持っていることに気付いた。

冬の季節で、天候は厳しく、家の中は常に暖房が入っているとはいえ……

昨夜、墨野宙が何度も起きて舞の世話をしていたことを思い出し、彼女の心は罪悪感に襲われた。

そこで、すぐに墨野玲奈に電話をかけ、あかちゃんの世話を手伝いに来てもらい、墨野玲奈が到着した後、二人で力を合わせて墨野宙を二階の寝室まで運んだ。