深夜、権守家。
権守夜はソファーに伏せって酒を飲んでいた。薄い寝巻き一枚で、部屋の暖房も入れていなかった。
老執事はそれを見て、すぐに部屋に入り、柔らかい薄い毛布を持ってきた。「若様、寒いですよ…」
「静流は見つかったか?」権守夜は目を細めながら、ワイングラスを掲げて執事に尋ねた。その仕草は妖艶で、人目を引くものだった。
「見つかりません。二番目のお嬢様は蒸発したかのように、東京中を探しましたが見つけられません」老執事は答えた。「若様、むしろ…」
「出て行け」権守夜は執事が何を言おうとしているかを知っていて、冷たく二言を吐いた。「他人は知らなくても、お前までも分からないのか。静流が私にとってどういう意味を持つのかを」
老執事はため息をつき、最後にこう言った。「若様のために探し続けます。ただ、奥様と旦那様に気付かれないことを願います」
権守夜は冷笑した。「気付かれても構わない」
彼と加藤静流は血のつながりがないのだ。そして…彼は静流に欲望を抱いている。どうして静流の兄としてうまくやれるだろうか?
「二番目のお嬢様は、若様がこのようになることを望まないでしょう。奥様はお体が弱いので、奥様を刺激したくないはずです」
「こんなストーリーは本当に最悪だ」権守夜はワイングラスを叩きつけた。まるで自分の立場への不満のように。「それなら、私が権守家と縁を切って、婿養子になればいいだろう?」
老執事は黙り込んだ。
むしろ権守夜が外に出て映画の撮影をし、より多くの女性と知り合うことを望んでいた。たとえ芸能界の女性でも構わないと思っていた。
「加藤静流、逃げられると思うな」
…
山本修治の加藤静流に対する調査は続いていた。調査が終わった後、オフィスで墨野宙に報告した。「権守夜は常識では測れない人物ですが、加藤静流に対しては非常に忍耐強いです。静流がどこにいても、最後には何かと口実を設けて近くに現れます」
「しかし加藤静流は頑固で、権守夜を何年も拒否し続けています。たとえ権守夜に触れられ、キスされても、二度目のチャンスは与えないでしょう」
「なかなか興味深いですね」
「こんな危険人物を、本当に天野奈々の側に置いておくつもりですか?」山本修治は試すように墨野宙に尋ねた。「権守夜が知ったら、東京はまた騒がしくなりますよ」