第810話 記者会を手配して

「死んだの?」陸野徹は慌てて尋ねた。

「はい」看護師は頷いた。「彼女は手首を切っただけでなく、内臓も刺して、致命傷を負いました。救急搬送中に心肺停止になりました」

「他人に厳しいだけでなく、自分にも厳しかったんだな」陸野徹は思わず感慨深げに言った。

「それに...」看護師は異様に暗い表情を浮かべ、しばらく間を置いてから皆に告げた。「遺書を残していて、天野さんは良い人ではないと書いてありました。救急搬送中も、ずっとそう言い続けていたそうです」

「この近藤好子は、死ぬ間際まで人を巻き込もうとしたのか」

墨野宙と天野奈々は揃って陸野徹を見つめ、墨野宙は直接彼に言った。「すぐに広報対応を。情報漏洩は一切許さん」

「承知しました、社長」

天野奈々はそれを聞いて俯き、何かを考え込んでいるようだった。墨野宙は彼女を抱きしめて慰めた。「これはお前には関係ない」