第830章 私の芸能人に手を出すな

浅川司は撮影現場で、シーンがない時も征途大会の動画を見ていた。

そして、中村さんが言っていたことを漠然と覚えていた。天野奈々が新しく契約したタレント、星野晶という名前の子だ。彼は意識的にこの少女に注目していた。大勢の参加者の中で、特に目立つ容姿ではなかったが、自信に満ち溢れていた。

この点が、浅川司はとても気に入っていた。特に彼女が歌った童謡を聞いた後、浅川司はより確信した。この少女には、優勝する潜在能力があると。

彼は中村さんの忠告も心に留めていた。監督と親しくなるように、たとえ親密にならなくても、少なくとも素直な俳優であるように。

深夜、浅川司はまだ撮影を待っていた。すぐに気づいたのは、監督が今夜、落ち着かない様子で、何度も電話を受けていたことだ。

浅川司は思わず尋ねた:「監督、何かあったんですか?」

監督は浅川司を見て、携帯を片付けながら笑った:「何でもないよ、戻って撮影を続けよう。」

「何か困ったことがあれば、私に話してください。」浅川司はそれ以外の言葉はなく、ただそう言っただけだった。

監督は素直で才能があり努力する子が好きだった。浅川司がそう言ったのを聞いて、冗談めかして言った:「お金に困ってるんだけど、貸してくれる?」

「いくらですか?」

「1億円だよ。」監督は浅川司を驚かせようとしただけだった。結局、浅川司のような若い、まだ無名の俳優がそんな大金を出せるはずがない。しかし、浅川司は二つ返事で中村さんに電話をかけ、1億円を借りようとした。

監督は浅川司が本気だと分かり、慌てて手を振った:「冗談だよ。私は監督という立場があるから、贈収賄と思われたくないんだ!」

浅川司は金を引っ込め、照れくさそうに笑った:「マネージャーが監督は義理堅い人だと言っていたので、本当に困っているなら、私は本当に助けたいと思います。」

「へぇ?」監督は目を細め、浅川司と一緒に階段に座り、二人は話し始めた。「君は以前グループで活動していて、歌手だったんだよね。それから新しい事務所に移って、新しい道を見つけた。坊や、これからは私について来ないか?」

浅川司は少し考えて、首を振った:「いいえ、監督とは友達になれますが、私は事務所を離れるつもりはありません。」

「どこの事務所なの?」

「スターメディアです。」