第836章 いつも墨社長が自ら担当する

平凡な顔立ち、平凡な服装だが、確かな実力と創作の才能を持っていた。

星野晶の試合動画は、ネットユーザーによって個別に編集され、ネット上で拡散された。

しかし、彼女が注目を集めた理由は、即興の創作ではなく、直接進出を宣言された唯一の人物だったからだ。

「この地味な選手、なかなか才能があるね」

「彼女の過去の試合動画を見てみたけど、それまでは基本に忠実な路線だったのに、今回は突然爆発したね」

「このお姉さんかっこいいね、芸能事務所と契約してるのかな？」

試合に注目が集まっていたため、星野晶も少し話題になった。実際、天野奈々が彼女の名前を変えていなかったり、イメージを変えていなかったりしたら、星野晶が野村律だと特定されるのは時間の問題だったが、今の状態では、彼女の背景を暴くにはもう少し時間が必要だった。

その夜、加藤静流は星野晶のために祝いの席を設けることにした。「約束通り、トップ100に入ったら、ある人に会わせてあげる」

実は、星野晶は試合の時よりも今の方が緊張していて、この時になって汗が出てきた。

「どうしたの？怖いの？」道中、加藤静流は笑みを浮かべながら言った。「キーワードをいくつか教えるから、誰か当ててみて。驚かないように」

「早く教えて」

「モデル、女優、既婚者」

「それじゃ全然ヒントにならないよ」星野晶は目を転がした。

加藤静流は笑って、それ以上は何も言わなかった。

すぐに二人は約束のホテルに着き、そのとき天野奈々もちょうど到着したところだった。星野晶は天野奈々の後ろで、彼女を見て加藤静流に小声で言った。「天野奈々さんでしょ？あの事件で引退した女優さん？」

「どう？」加藤静流は星野晶に問い返した。「彼女のこと嫌い？」

「私たちが仰ぎ見る存在じゃないですか。彼女の人としての態度や仕事への姿勢が好きです。それに、どの作品も素晴らしくて、あんなに素敵な人と結婚して、それでも頑張り続けている。普通の人なら誰でも好きになりますよね？」

「それは良かった」加藤静流は答えた。

「何が良かったの？」

「おめでとう。彼女があなたの背後のボスよ」加藤静流はそう言いながら、天野奈々の後に続いて個室のドアを開けた……