第840章 姉妹のどちらが泥棒なのか?

「結局、姉妹のどちらが泥棒なの?」

「加藤静流の話によると、中村千明は数年前に姉の優勝を盗んで、野村律が変装して再び大会に出場するのを見て、焦ったんでしょう。だから姉が盗みを働いたことを暴露して、自分は潔白だと言い張った。もしそうなら、中村千明はあまりにも悪質すぎる。ゾッとするわ」

「野村律には才能がある。これは誰もが認めることで、当時、彼女には盗む動機なんて全くなかった。これは3年前の大会を見ていた古参ファンとしての、私の正直な感想です」

「証拠は?誰か証拠を出して証明してよ」

「私は、この件に関して、野村律の方が同情に値すると思う」

弱者だからこそ、みんなの共感を得やすいのだ。

中村千明は、加藤静流がまさかそんなことを公に言い出すとは思っていなかった。ネット上の世論が逆転し始めるのを見て、歯ぎしりするほど悔しがった。

「だから言ったでしょう。これは敵に千の傷を負わせて、自分も八百の傷を負うようなものだって。あなたは聞く耳を持たなかった。今や自分も泥をかぶることになって、満足?」マネージャーは中村千明の耳元で言った。「今となっては、証拠を出すことと、工作員を雇うことしか方法がない。でも、これは本来なら必要のない出費だったのに」

「あのクズがデビューするのが気に入らないの。あなたに何がわかるの?」中村千明は反抗的にマネージャーに言い返した。「手伝ってくれないなら、それでいい。余計なことを言って私をイライラさせないで」

「じゃあ、私は帰ります」マネージャーは怒って中村千明のマンションを出て行った。

中村千明は腹立たしかった。あの時の件は、彼女が野村律を告発し、物を彼女のバッグに仕込んだのだ。野村律は弁明のしようもなく、彼女がこの件にこだわり続ければ、野村律は這い上がれないはずだった。

そこで、彼女は自らSNSに投稿した:「あの時の件について、全ての出場者が証言できます。私には姉を中傷する理由なんてありません。私もずっと後ろめたく思っていました。物は確かに彼女のバッグから見つかりました。当時その場にいた人なら、誰でも証明できます」

中村千明の説明が出るや否や、加藤静流はすぐに反論した。