第886話 アンチから推しに変わるってどういうこと?

「ちゃんと言うことを聞くべきよ。もし私が先に山岳地帯に来ていなかったら、誰があなたたちを救えたと思う?」ここまで言って、木下准の声は少し柔らかくなった。「少なくとも、あなたのタレントのように、野外生存の技術を身につけるべきよ」

加藤静流はこれが木下准の譲歩だと分かり、最後にうなずいた。「分かったわ。時間があるときに行くわ」

二人の間に突然沈黙が訪れた。共通の話題が少なかったため、加藤静流は少し気まずそうだった。「あの、もう一、二日も時間を取らせてしまったけど、忙しくないの?」

木下准は何も言わず、家の予備の鍵をベッドサイドテーブルに置き、突然加藤静流を抱きしめてから立ち上がった。「これから出かけるけど、五日ほどで戻ってくる」

加藤静流は顔を赤らめながらうなずいた。「私は良くなったら家に帰るわ」