「海輝はずっと前から関わっていて、田村青流という男は、この世界に少しずつ追い詰められていくだろう」
夏目栞はその言葉を聞いて理解した。海輝が関わってきたのは、天野奈々と加藤静流のためだったのだ。
「あなたは天野奈々の下で順調にやっていたのに、あんな男のために自分を犠牲にするなんて。私、河野峰夫は善人とは言えないが、女性に対しては常に寛大だ。だから、あなたが望むなら、全力であなたをサポートして、スターにしてあげよう」
夏目栞はその言葉を聞いて、より複雑な感情に襲われた。なぜか突然、守られているような感覚が心の中に生まれた。
しかし、すぐにそれは消え、彼女は理解した。この保護はどれだけ続くのだろうか?でも、どちらにしても田中社長はあのクズの田村青流よりはマシだ。少なくとも、田村青流は彼女に対して欺きと裏切りしかなく、何も与えてくれなかった。
……
田村青流は電話を切った後も警戒心を持たなかった。おぼっちゃまが真相を知っていることを知りながら、少しの警戒もしていなかった。
すぐにドアベルが鳴り、田村青流は立ち上がってドアを開けた。しかし、相手の顔も見えないうちに一発殴られた。
もちろん、相手は達人で、田村青流の体に目立つ傷を残すような攻撃はせず、腹部を集中的に殴り続けた。
「クズ野郎、言っておくが、これからは定期的にお前の前に現れて、たっぷりと制裁を加えてやる。おぼっちゃまは特別にお前を一生苦しめるために金を出してくれたんだ。運が悪かったな!」
田村青流は地面に倒れ動けなくなり、腹部の痛みで痙攣し、すぐに気を失った。
天野奈々は以前から言っていた。この世界には因果関係があるのだと。
あなたが以前にどんな種を蒔いたかで、後にどんな実を得るかが決まる。
田村青流の末路は同情に値しない。外見は相変わらず華やかに見えるからこそ、彼は苦しむのだ。
今の彼には、この空っぽの殻しか残っていない……ゆっくりと弄んでやる。
誰も田村青流が怪我をしていることに気付かず、翌日も番組に来なかった。夏目栞はそれを見てスタッフに尋ねた。「なぜ田村青流は来ないんですか?」
「電話で催促しましたが、田村さんは怪我をして病院にいるそうです」とスタッフは答えた。
「どうして?」
「自宅で何者かに襲われたそうです」