第942章 ダイヤモンドブローカー

有馬夏菜は不満を感じていた。以前は加藤静流を利用できず、今度は中村明音の息子まで失ってしまった。まるでスーパースターに関わることは全て、彼女には抵抗する余地がないかのようだった。

ようやくあの幼稚な男を追い払えたものの、中村明音に対抗するためでなければ、自分よりずっと年下の男なんか相手にするはずがなかった。毎日お金を使うばかりか、悪い癖も多く、世話をする気など全くなかった。ましてや、こんな大きなリスクを冒してまで。

「夏菜さん、かずきくんを追い払ってしまって、天野奈々は本当に写真をくれるんでしょうか?」

「他に何ができるというの?」有馬夏菜はワインを飲みながらマネージャーに問い返した。「今は私が完全に向こうの思い通りよ。どうしようもないわ。もう中村明音に対抗できる切り札は何もない。これからは、天野奈々に踏みにじられるのを待つだけね……」