「これまで、億万長者に1億4千万の値段で競り落とされたはずなのに?どうして彼女の首に掛かっているの?」
「これ、偽物じゃないの?」
「いいえ、これは確かにあの競売にかけられたものよ。私の人格にかけて保証するわ」
来賓たちの間で、すでに議論が始まっていた。このネックレスの由来を知らない来賓やメディアでさえ、このネックレスが非常に高価なものだと感じていた。
なぜなら、これは108個の最高級ダイヤモンドで作られており、カットの技術は世界最高峰のものだったからだ。
天野奈々は来賓たちを一瞥し、その後墨野宙の胸に寄りかかり、快適な姿勢に調整して、木下准のパフォーマンスを見守った。
「式が始まる前に、皆様にお伝えしたいことがあります」木下准は加藤静流の手を取りながら、全員に向かって言った。「最近、静流に関する様々なニュースをご覧になり、彼女の出自が複雑で、あまり誉れ高くないとお考えの方も多いことと存じます」
「先ほどの来賓の中でも、静流に対する不満の声を耳にしました。しかし、私は皆様にお聞きしたい。私の結婚が、皆様とどのような関係があるというのでしょうか?」
「私がこのタイミングで静流と結婚するのは、彼女が私の認めた妻だからです。これは彼女の出自とは無関係です」
「ですから、ご列席の皆様は私たち夫婦のことを心配なさる必要はありません。これからの道のり、私たちは白髪になるまで共に歩んでいきます……」
「そして、皆様にもう少々お待ちいただきたいことがございます。重要なお客様がまだ到着されていないのです」
「誰なの?」全員が好奇心に満ちていた。まさか、木下家は有馬夏菜を招待したのだろうか?
そんなはずはない。
自分で面倒を招くようなことをするはずがない。
言い終わると、木下准は加藤静流の手を取り、司会者の前で静かに待っていた。5分が経過したが、正面玄関にはまだ動きがなかった。しばらくして、ようやく誰かが横門から会場に入ってきた。遠くにいる人々には良く見えなかったかもしれないが、近くにいた人々は、その人物を見て思わず口を押さえた。
その人物は他でもない、現在のホテル王、久世賢一だった。
「申し訳ありません、遅れてしまって……」