第949章 ごめんなさい、我慢できなかった

新婚の夜、加藤静流はネックレスをしまい込んだ。永遠の心の由来を知ったからだ。正直に言えば、まだ久世家の物を受け入れることができなかった。ネックレスは彼女の名誉を守ってくれたのだから、返したいと思った。

バスルームからは、シャワーの音が木下准の入浴を告げていた。加藤静流は赤い絹のパジャマを着て、二人の寝室のベッドを振り返った。

その瞬間、彼女は突然顔を赤らめた。本当に結婚したのだと実感し、これからどういうことが起こるのかも分かっていたからだ。

すぐに、木下准は上半身裸でバスルームから出てきて、静流が物を片付けているのを見ると、後ろから抱きしめた。「もういいよ、休もう?」

静流は彼の言葉の意味を理解し、ゆっくりと手の中の物を置いた。

木下准はそれを見て、すぐに彼女を抱き上げ、柔らかな婚礼のベッドに寝かせた。5時にはまた出かけなければならないので、今この時を大切にしなければならなかった。

「やっと、君は僕の妻になった...」木下准は静流にキスしながら囁いた。「でも静流、僕と結婚しても、いつも側にいられるとは限らないよ。」

この点について、静流は木下准を理解していた。彼の首に腕を回して答えた。「行くべきところへ行って。家のことは私が守るから。」

その後の時間は、言葉は必要なかった。木下准は柔らかな唇に覆い被さり、キスを深めていった...

ドアの外では、木下夫人がこっそりと部屋の様子を伺い、手足を動かしながら大げさな表情を浮かべていた。

松田お父さんは彼女の行動に呆れた様子だった。

「お爺さん、もうすぐ孫が抱けそうね...」

松田お父さんは彼女を睨みつけ、すぐに部屋に連れ戻した。息子が結婚したばかりなのに、人の部屋の前で盗み聞きするなんて恥ずかしい話だ。もちろん、木下夫人はただ一時の悪ふざけだった。

しかし、この夜、皆が加藤静流の結婚の喜びに浸っている中、有馬夏菜が中村明音の息子を利用して彼女の貯金を騙し取り、二人で空港で待ち合わせて国外逃亡を図ろうとしていることは誰も知らなかった。中村明音は息子に貯金を盗まれたことを知ると、すぐに息子の親友を探し出し、息子の情報を得て急いで空港に向かった。

二人は搭乗する前に、中村明音にフライトを突き止められ、セキュリティチェックの通路で行く手を阻まれた。