日本アカデミー賞の授賞式にて。
天野奈々は加藤静流と浅川司を一緒にレッドカーペットを歩かせた。表向きは、加藤静流がスーパースターを代表して浅川司を支援するためだったが、実際には、加藤静流は天野奈々の代わりに賞を受け取るために来ていた。
レッドカーペットには大物スターが集まり、加藤静流は浅川司が業界の多くの人物と交流を持っているのを見て、彼の成長を喜んでいた。
スターの中で、浅川司は最年少だったが、人生の浮き沈みを経験し、今日の成功を手に入れるまでには苦労があった。だからこそ、彼は目の前にあるすべてを特に大切にしていた。
「さっき握手した木村社長が、法外な金額を提示して、自分の会社に引き抜こうとしてきたんです」とレッドカーペットを歩きながら、浅川司は加藤静流に話した。
加藤静流は一瞬驚き、この人気絶頂の若手スターの方を向いて、彼が微笑むのを見た。
「でも、僕はすぐに断りました。僕は二番目の夏目栞にはなりたくないからです」
男として、浅川司は天野奈々が与えてくれた希望を永遠に忘れない。たとえ好きな女性に出会い、天野奈々と対立することになっても、天野奈々とスーパースターを裏切ることはない。
「私たちは一つの大家族なんです」
加藤静流はうなずき、浅川司に微笑んで答えた。「安心して。スーパースターが与えてくれるものは最高のものではないかもしれないけど、あなたのために全力を尽くしてくれる。低迷期には道を切り開き、グローリーの時には心から拍手を送ってくれる」
星のように輝くレッドカーペットの上で、浅川司は加藤静流を見つめ、最高の笑顔を見せた。
スーパースターに加入したことは、彼の人生で最も正しい選択だった。
……
すぐに二人は会場内に入った。しかし、授賞式が始まる前に、有馬夏菜は前列に座る加藤静流を見つけ、わざと席を移動して彼女の隣に座った。
「ここで会えるとは思わなかったわ。でも、ここにアシスタントやマネージャーの席はないはずよ」
加藤静流は有馬夏菜と話す気が全くなかった。
「今やあなたは様々な場所に顔を出せるようになったのだから、年配の女性を苦しめる必要はないでしょう?あなた自身がデビューすればいい」
有馬夏菜のこの言葉を聞いて、加藤静流は冷たく彼女を見つめた。「安心して。私はあなたのように、他人の成果を奪うようなことはしない」