第970章 一体どれほどの力を持つのか

「そういうことか。私の恨みを晴らすことさえできないのか?」佐藤社長は心の中で納得がいかず、「くそったれ、まったく腹立たしい!」

幸いにも、加藤静流はすでに渓谷の奥深くに行ってしまっていた。天野奈々がどんなに有能でも、すぐに加藤静流を見つけ出すことはできないだろう。これが唯一、彼が幸いに思えることだった。

しかし、彼は知らなかった。加藤静流は、すでに自分で小さな町に戻っていたことを。

町に戻ってきて最初に聞いたのは、陸野徹が彼女を必死に探し回っているということだった。彼女は天野奈々に申し訳ないと思っていたが、言いづらい事情があった。

しかし、陸野徹はすぐに加藤静流が宿に戻ってきたという情報を得て、彼女を見つけて初めて安心した。

「君には随分と探し回らされたよ。君のせいで、奥様と佐藤社長は、もう少しで銃を向け合うところだったんだぞ」

「じゃあ、私についてきた二人の男は、佐藤社長の部下だったんですね?」加藤静流は、なぜ自分が渓谷に誘導されたのか、やっと理解できた。

「そうだと思うだろう?でも、君は私たちの期待を裏切らなかった。判断力があったね。奥様が君をこれほど守ろうとするのも無駄じゃなかった...」

「じゃあ、あの二人は捕まえましたか?」加藤静流は尋ねた。

「行方は掴んでいる。仕返しに行きたいか?」陸野徹は眉を上げながら聞き返した。

「もちろんです」加藤静流は顔を上げて答えた。こんなことは、絶対に見過ごすわけにはいかない。木下准のことを利用して彼女を騙すなんて。

「木下准のことは、あまり絶望的に考えないでいい。必ず情報が入るはずだ」

「わかっています」加藤静流は自信を持って答えた。「私にはわかるんです。彼は死んでいない、絶対に死んでいないはずです」

「よし、じゃあ今から行こう。あの二人は今、食堂で食事をしているところだ」陸野徹は大広間の方をちらりと見た。

「先に声をかけておいてください。すぐに行きます」

陸野徹は頷き、部下を連れて二人がいるテーブルへ向かい、彼らの隣にどかりと座った。「宿の主人の話では、君たち二人は加藤静流の後をつけて数日経つそうだな?」

二人は陸野徹を見て、彼が何者かすぐにわかったので、思わず目が泳いだ。

「このお方、人違いではないでしょうか?」