第984章 あの人渣を見逃すな

「早く誰か、佐藤社長を助け起こしなさい」森正宗は警備員に急いで言った。「佐藤社長を安全に自宅まで送り届けなさい」

佐藤社長は氷水を浴びせられたショックで少し正気を取り戻し、警備員に支えられながら立ち上がった。その後、震える指で夏目栞を指さしながら言った。「お前...お前は今日やったことの代償を必ず払うことになるぞ」

夏目栞は負けじと言った。「いつでも待ってますよ」

天野奈々は宣戦布告し合う二人を見て、首を横に振った。佐藤社長が去った後、夏目栞に言った。「これは私の問題よ。あなたが関わる必要はないわ。自分が何様だと思ってるの？」

夏目栞は呆然とした。

「あなたはもうスーパースターとは関係ないでしょう。私と加藤静流のことに口を出さないで」

「あの人渣はあなたが関わっていい相手じゃないわ。覚えておきなさい。次に会ったら、遠ざかりなさい...あなたには関係ないことよ」

「さっきはスッキリした顔してたけど、もう私の隣に座る必要はないわね」

夏目栞は何も言わず、静かに元の席に戻った。

彼女は心の中でよく分かっていた。今何を言っても、何をしても、もう元には戻れないということを。彼女はもうスーパースターから追放されたのだ。

「宙、佐藤社長が夏目栞に報復するかもしれないから気をつけて」

天野奈々の後ろに立っていた墨野宙は頷いた。「心配するな。帰ったら陸野徹に手配させる」

「もう彼女はスーパースターの人間じゃないけど、何か不測の事態が起きてほしくないの」

長年連れ添った夫婦として、墨野宙は天野奈々の心中を理解していた。彼女は夏目栞を巻き込みたくなかったのだ。

「今日はあの人渣に恥をかかせただけだけど、彼は私に付きまとう気満々みたい」

この点について、墨野宙は何も言わなかった。既に密かに策を練っていたが、物事には時間が必要だからだ。

すぐに結婚式の宴会は平静を取り戻し、昼食の後はダンスパーティーとなった。

天野奈々は妊婦として、ダンスを楽しむ権利はなく、墨野宙の付き添いのもと、脇に座っているしかなかった。

さすが芸能界の集まりだけあって、歌や踊りの上手な人が本当に多かった。

特に森正宗の新婦は、彼の言う通り、どんなダンスも難なくこなし、本当にダンスの才能に恵まれていた。

「あの子を本当にスーパースター傘下に入れるつもり？」