第985章 墨野宙、お前はよくやったな

夏目栞は危険期を乗り越え、一時的に命の危険はなくなったものの、まだ目覚めることなく、集中治療室で静かに横たわっていた。

天野奈々がベッドに横たわっている時、中村さんと加藤静流が見舞いに来た。事の顛末を知った後、思わず感嘆して言った。「この佐藤社長は、社長の逆鱗に触れてしまったということですね?」

「夏目栞はいったいなぜ転落したのでしょうか。もしかして、佐藤社長が手を下したのでしょうか?」

天野奈々は首を振り、当時の状況についてよく分からないと示した。

「奈々がこんな状態なのに、これ以上質問するのはやめましょう。墨野社長に知られたら、私も助けられませんよ」加藤静流は中村さんの質問が多いのを見て、急いで遮った。「奈々にゆっくり休ませてあげましょう」

天野奈々の頭の中には、この瞬間、夏目栞が転落した後の光景が浮かんでいた。全身血まみれになった彼女が、天野奈々に許してくれるかと尋ねる姿が。