離婚したくない?とんでもない!

山本正博を見られて、池村琴子は一瞬驚いた。

彼女は山本正博がどんなに早くても病院で数日は過ごすはずだと思っていたのに、なぜこんなに早く…

山本正博の視線が高橋謙一が彼女の手を握っているところに落ちるのを見て、琴子は反射的に高橋謙一の手を振り払った。

彼の怒りを高橋謙一ははっきりと見て取り、ゆっくりと口角を上げた。「山本さんは怪我をされたんじゃないか?なぜもう少し病院にいらっしゃらないんですか。」

山本は彼を見もせず、素早く琴子の側に歩み寄って尋ねた。「医者が君の検査が終わっていないのに出てきたと言っていたが?」

「うん。私は大丈夫。」

体の傷は治せても、心の傷は癒えにくい。

琴子は正博が来るとは思っていなかった。まさか自分の検査に行くように促すためだけに来たのだろうか?