第54章 彼女に謝罪して、なだめよう

山本グループ、山本正博のオフィスにて。

「社長」小さな助手が笑顔で入室してきた。「当社の宝石デザインがノミネートされ、国際宝石フェスティバルに参加できることになりました」

国際宝石フェスティバルは世界的な大会で、今年は日本で開催される。個人での参加は認められず、企業単位での参加のみ。そのため、多くの企業が自社の名声のために予選に参加しようと躍起になっている。これまでは宝石専門の企業しか参加資格がなかったが、今回は投資と不動産を手がける山本グループも参加できることになった。

山本正博は眉を上げ、池村琴子のことを思い出した。

彼女は大学で宝石デザインを専攻し、山本グループに入社してから、この部門を脇役からメインビジネスに成長させた。

「彼女はまだ会社にいるのか?」

助手は一瞬戸惑い、すぐに池村琴子のことだと気付いた。