山本グループ、山本正博のオフィスにて。
「社長」小さな助手が笑顔で入室してきた。「当社の宝石デザインがノミネートされ、国際宝石フェスティバルに参加できることになりました」
国際宝石フェスティバルは世界的な大会で、今年は日本で開催される。個人での参加は認められず、企業単位での参加のみ。そのため、多くの企業が自社の名声のために予選に参加しようと躍起になっている。これまでは宝石専門の企業しか参加資格がなかったが、今回は投資と不動産を手がける山本グループも参加できることになった。
山本正博は眉を上げ、池村琴子のことを思い出した。
彼女は大学で宝石デザインを専攻し、山本グループに入社してから、この部門を脇役からメインビジネスに成長させた。
「彼女はまだ会社にいるのか?」
助手は一瞬戸惑い、すぐに池村琴子のことだと気付いた。
「池村さんはまだ退職していません」
山本正博は頷いた。「彼女が良ければ、今回は彼女に参加してもらおう」
山本グループの宝石デザインが注目を集めたのは池村琴子の功績だ。このような大会に参加させれば、彼女も喜ぶだろう。
助手は頷いた。それは理にかなった配置だと。
「池村さんとの出張の手配は私がします」
出張?
山本正博は顔を上げ、今回の大会が企業名義での参加なら、自分も行けると気付いた。
山本正博は目を細め、結局何も言わなかった。
宝石フェスティバルの参加企業が発表されたばかりで、高木朝子はすぐにこのニュースを目にした。
宝石フェスティバルへの参加は、すべての宝石デザイナーにとって名誉なことだ。たとえ入賞できなくても、経歴に華やかな一頁を加えることができる。
彼女は喜んで山本正博にメッセージを送ろうとした。このような機会は貴重だ、絶対に参加したい。
しかし、メッセージを送る前に、高橋姉帰からメッセージが届いた:三兄が目を覚ました。
高木朝子は固まり、目に怒りが浮かんだ。
高橋謙一の命は本当に強い、大型トラックに轢かれても死なない。
高木朝子:池村琴子が高橋仙だということがバレた?
メッセージを送ったが、返信がなかった。高木朝子の心臓は激しく鼓動した。
直感的に、何か起きたに違いないと感じた。
……
高橋邸で、高橋姉帰は怪我をしながらも必死に留まっていた。