「彼女を探しに行く」高橋敬一は振り向きもせずに屋敷の裏へ向かった。高橋忠一は心配で、さらに数人の警備員を後ろに付けた。
池村琴子は服を持って更衣室に入った。
この更衣室は前回の高橋姉帰のプライベート更衣室とは明らかに異なり、やや小さいものの、より充実していた。
中にいるメイクアップアーティストは高橋家が長期契約している人で、彼女を見て家族会食に参加する親戚の一人だと思った。
「お嬢様、メイクについて何かご要望はありますか?」
池村琴子は鏡の中の自分を見つめ、じっくりと考えた。「濃くしすぎないでください」
彼女の顔立ちは元々妖艶な方で、少しでも濃いメイクをすると派手で大げさになってしまう。薄めのメイクでこそ、派手すぎない印象になる。
メイクアップアーティストが彼女の顔に作業を始める中、池村琴子は気づかなかったが、横で誰かが彼女をじっと観察していた。