店員は言葉を失い、おずおずと高木朝子を見つめていた。
高木朝子の美しい顔が一瞬にして醜くなった。彼女は池村琴子の支払いを止めようとしただけで、全てのドレスを買うとは言っていなかった。
このブティックのドレスを全て買うとなると数千万円もかかる。
試着もしていない服もあるのに、どうして全部買えるというの?
しかし、これだけの人前で、高木朝子は直接否定することもできず、店員に遠回しに言うしかなかった。「さっき私が言ったものだけ包んでください」
池村琴子は冷笑し、ドレスを選び始めた。
これで、店員も高木朝子も口を挟む勇気がなくなった。
池村琴子は白いベアトップのロングドレスを選んだ。
ドレスの裾には手作りのレースが一周施され、ベアトップ部分には小さな真珠で蝶々が作られ、肩周りを取り囲み、胸元の白いバラと呼応し、デザインは独特で繊細だった。