店の入り口に着くと、池村琴子は三歩を二歩に詰めて素早く中に入った。
店員は彼女を何度か見て、シンプルな服装で、ブランド物も身につけていないのを見て、ただのウィンドウショッピングだと思った。
誰も彼女に接客しようとしなかった。
池村琴子は気にせず、ドレスコーナーに素早く向かい、ちょうど一着を手に取ろうとしたところで、隣の店員に止められた。「あの、お客様、このドレスは一千万円で、割引はありません。」
池村琴子の手が止まり、別の一着を取ろうとすると、また店員が慌てて止めた。「こちらはもっと高くて、一千六百万円です!」
池村琴子は手を下ろし、適当に一着を指さして言った。「じゃあ、あなたが取って。これにします。」
店員はピクリとも動かず、彼女の言葉を聞いていないかのようだった。