第66章 おめでとう

妊娠は大事なことだからね。

彼は咳払いをして、からかうように尋ねた。「なあ、聞きたいんだけど、この三年間、彼女とやったのか?」

山本正博は眉をひそめ、あの夜、彼女に薬を盛られた場面が頭をよぎった。

その夜、いつものように彼女が作った白きくらげと梨のスープを飲んだ。まさか飲んだ後、その夜から体が制御不能になるとは思わなかった。

結婚して三年、彼は契約を守り、彼女に触れることはなかった。あれが初めてだった。

そして、それは屈辱的な一夜でもあった。

「ない」山本正博は薄い唇を固く結び、周囲の空気は暗く恐ろしいものとなった。

鈴木哲寧は軽く「へえ」と声を出し、彼に親指を立てた。

関係を持っていないのなら、池村琴子の妊娠は明らかに他人の子供だ。

山本正博はもう少しで父親になるところだった!

離婚できて不幸中の幸いだ。

鈴木哲寧のハンサムな顔が何度か引きつった。

まあ、こんな気まずい話は、自分から切り出すのはやめておこう。

池村琴子には先日会ったが、その美しさに驚嘆した。

あの女性は素晴らしいスタイルで、まさに極上の美女だ。顔立ちも整っている。山本正博が三年も我慢できたなんて、本当に感心する。

池村琴子が三年間独身生活を送っていたと思うと、山本正博に同情する気持ちが消えた。

三年間関係を持たないなんて、誰が耐えられる?浮気するのも無理はない。

「池村琴子との離婚のこと、高木朝子は知ってるのか?本当に彼女と結婚するつもりなのか?」

山本正博は黙ったまま、全身から冷たい雰囲気を漂わせ、くっきりとした顔には何の表情も浮かべていなかった。

鈴木哲寧はため息をつき、タバコに火をつけた。「正博、本音を言わせてもらう。」

「人生は長い。池村琴子のことが好きなら追いかければいい。取り返しのつかないことになってから後悔するなよ。」そう言って、鈴木哲寧は苦笑いを浮かべた。

山本正博は、彼がタバコを深く吸いながら物思いにふける様子を見て、すぐに誰かのことを思い出しているのだと察した。

「彼女は結婚したのに、まだ待ってるのか?」

鈴木哲寧の手が一瞬止まり、軽く「あ」と声を出した。「何を考えてるんだ?離婚したら尻拭い役をやるとでも思ってるのか?彼女には私を選ばなかったことが損失だったと分からせてやる。」