中央病院。
看護師がベッドシーツを交換し終えると、高橋姉帰は頭を下げたまま、こっそりと高橋敬一の様子を窺った。
高橋家では、父親の次に敬一が一番自分に優しく、何かあれば自分の味方になってくれたので、彼女は何でも彼に話すことができた。
しかし今回のことだけは、最後まで黙っていた。
高橋仙と自分が対立した時、彼が変わらず自分の味方でいてくれるという保証はなかったから。
病室から人がいなくなると、高橋敬一は優しく彼女の布団の端を直してくれた。
高橋姉帰は目に熱いものを感じながら、もごもごと言った:「高木朝子が土下座して頼んできたの。私、つい心が揺らいでしまって」
彼女は目を伏せたまま、言葉を選びながら続けた:「海外にいた時から彼女に協力を頼まれていて、その時に約束しちゃったの。高木家との協力関係は変わらないと思ってたから。でも池村琴子が...」
「二番目のお兄ちゃん、こんなこと話すのは、私が仙と対立したかったわけじゃないってわかってほしくて。約束を破る人間になりたくなかっただけなの」
高橋敬一は黙ったままだった。
高橋姉帰は笑顔で彼の服の裾を引っ張った:「二番目のお兄ちゃん、素敵な車椅子を選んでくれない?」
「素敵な杖も欲しいの。医者が言うには、もうすぐ手術だから、これらは前もって用意しておいた方がいいって。他人の目は気にしないけど、お兄ちゃんの意見だけは信用してるの」
彼女が期待の眼差しで見つめると、高橋敬一はついに折れた。
姉帰が自ら手術のことを話題にできるということは、現実を受け入れられるようになったということだ。
この変化は何よりも良いことだった。
「お前が意図的に池村琴子を...」彼は言葉を切って、「兄たちには私から説明しておく」
高橋姉帰は急いで頷き、チェリーのような小さな唇を不満げに尖らせた:「私は本当に彼女を狙ったわけじゃないの。仙としての彼女の立場はもう受け入れてるし、高木朝子にも今回限りって約束したの。もう二度と手伝わない」
「うん」
高橋姉帰は高橋敬一が承諾したのを見て、すぐに別の話題に移った。彼が自分を疑っていないのを確認すると、得意げに唇の端を上げた。
血のつながりがあったって何なの?彼女は兄たちと二十年以上も寝食を共にしてきた。たかが数日の付き合いの池村琴子なんかに負けるわけがない。