鈴木哲寧は別のバイクに跨り、苦々しく後を追った。
二人は高橋邸の門前まで飛ばして、やっと止まった。
「なんでここに来たんだ?」鈴木哲寧は親友を見つめた。
「高橋忠一に池村琴子のことを頼んでおいたんだ」
鈴木哲寧:「!!」
ヤキモチを焼いて妻を追いかける男は見たことがあるが、好きな人を他人に押しつける男は初めて見た。
この数日様子がおかしかったわけだ。眠らず、毎日運動とアルコールで自分を麻痺させていた。
「後悔してるのか?」鈴木哲寧は意味深な笑みを浮かべた。
山本正博はヘルメットを脱ぎ、目を伏せた。
鈴木哲寧は腕を組み、諦めたようにバイクに寄りかかった。「お前は俺と同じだな。自分の冷酷さを過信して、好きな人を突き放せば未練も断ち切れると思ったんだろう。結局、苦しむのは自分だけだ」