第84章 兄を名乗る資格があるのか？

彼女はもごもごと言い、困ったように俯いた。

高橋敬一は彼女のその様子を見て、言い出せないのだと思い、顔を曇らせながら言った。「はっきり言いなさい。怖がることはない。両親もここにいるんだから、何かあっても守ってあげるよ。」

高橋姉帰は高橋忠一を一瞥し、下唇を強く噛みしめ、言いかけては止めた……

夜の闇が広がる山本邸。

マイバッハが車庫に入ったところだった。

山本家の家政婦が慌てて近寄ってきた。「山本さん、奥様がお戻りになりました。」

山本正博の瞳が暗く沈んだ。

母は最近、病院でおとなしく、暴れることもなく、大人しく検査を受けていた。主な理由は、自分を兄だと思い込んでいたからだ。

母は兄が大好きで、兄の言うことを一番よく聞いた。

兄が亡くなる前、彼らは別の場所に住んでいた。この場所は兄が亡くなった後に引っ越してきたところだ。

母がこの場所を見つけたということは、記憶が戻ったということだ。

「彼女はどこにいる？」

「応接間です。三時間以上もお待ちです。」奥様の態度を思い出し、家政婦も少し怯えた様子だった。

山本正博は眉をひそめ、大股で応接間へ向かった。

……

病院で、高橋敬一の催促に、高橋姉帰は深く息を吸い、蚊の鳴くような声で言った。「どうして転んだのか、私にもわからないんです……」

皆の視線の中、さらに付け加えた。「でも、その時誰かの手が私に触れた気がします。」

高橋敬一は「バッ」と立ち上がった。

「やっぱり彼女だ！」無表情の高橋忠一を冷たく見つめながら言った。「お前と弟は彼女をかばうが、姉帰の言葉で十分明らかじゃないか？間違いなく彼女だ、この毒婦が！」

「こんなに長い間私たちの側にいなかったんだ、どんな風に育ったか誰にもわからない。」深く考える暇もなく、高橋敬一は怒りに任せて言葉を吐いた。

「彼女が来てから、うちは平穏を失った……」

「黙れ！」高橋進が厳しい口調で遮った。眉間に深いしわを寄せて。「彼女はお前の妹だ。」

「妹だろうが何だろうが？こんな性悪な妹なんて、要らないよ。こんな人間、戻ってこなければよかった……」

「パン！」という音と共に、平手打ちが彼の言葉を遮った。

高橋敬一は頬を押さえ、自分を打った人を驚いて見つめた。

「母さん……」