第88章 母の頼みだと思って

「はい、本来なら私が関わるべきことではありませんが、以前なら必ずあなたの味方をしていたでしょう。でも今は状況が少し複雑で...」吉田蘭は山本宝子のことを思い出し、歯を食いしばって池村琴子の手を握りました。「琴子、あなたはもう正博と離婚したわ。お母さんはあなたの意見を尊重するけど、この件については、助けてほしいの」

目を逸らす吉田蘭を見つめながら、池村琴子は彼女の手を握り返して言いました。「まず、どんな助けが必要なのか教えてください。私にできることなら必ず協力します」

「高木朝子を助けてあげてほしいの。彼女が出てきたら、あなたがどんな仕打ちをしても文句は言わないわ。でも彼女を...刑務所に入れるわけにはいかないの!」

吉田蘭の言葉を聞いて、池村琴子の表情が凍りつきました。

義母がいろいろな助けを求めてくることは予想していましたが、高木朝子を助けることだとは思いもしませんでした。

義母は以前、彼女と高木朝子のことで病院に運ばれたこともあったのに、どうして急に考えを変えたのでしょうか?

「理由を教えていただけますか?」義母の記憶が戻っているのなら、高木朝子の味方をするはずがありません。

吉田蘭の言葉に傷つき、困惑しながらも、彼女はその理由を知りたかったのです。

「高木家があなたを脅したの?」

吉田蘭は首を振り、何か言いかけましたが、結局心の中の言葉を飲み込みました。

もし琴子が高木朝子と山本正博の間に子供がいることを知ったら、きっと朝子を助けることを更に拒むでしょう。

彼女は朝子のことが好きではありませんでしたが、それでも山本宝子の母親なのです。

もし朝子が前科者になってしまえば、宝子の将来の学業や就職にも影響が出てしまいます。

自分の要求が無理だということはわかっていました。でも仕方がない、孫のために、何としても朝子を助け出さなければならないのです。

「高木朝子が何をしたか、ご存知ですか?」池村琴子は笑みを消して尋ねました。

吉田蘭は眉をしかめました。朝子が刑務所に入ることになった件については少しだけ知っていました。高橋家の息子の誰かを怒らせたらしいのですが、そんな理由は重要ではないと彼女は知っていました。最も重要なのは琴子にかかっているということです。

朝子を刑務所に送り込んだのは琴子なのだから、罪を軽くすることもできるはずです。