第153章 修羅場

安藤静は怒って山本正博を睨みつけた。

本来なら一人で来るつもりだったのに、厚かましい山本正博が勝手に来ただけでなく、山本正博まで連れてきた。

池村琴子の家に男が増えているのを見て、安藤静は腸が青くなるほど悔しかった。

南條夜のことは知っていた。ニュースでよく見かける男で、前回の子供認知騒動も大きな話題になった。

南條夜とあのタレントの間では、彼女は断固として南條夜派だった。

「私たち、来るタイミングが悪かったかしら?」と安藤静は尋ねた。

「僕は絶好のタイミングだと思うけどね」鈴木哲寧はニヤニヤしながら、片手で安藤静の首に腕を回し、もう片方の手で山本正博の首に腕を回した。まるで老狐のような笑みを浮かべていた。

安藤静は冷笑いを浮かべながら、肘で後ろを強く突いた。鈴木哲寧は悲鳴を上げて胸を押さえ、顔を歪めた。

山本正博の黒曜石のような瞳に不思議な光が宿り、唇の端が微かに上がって、笑っているのか笑っていないのか分からない表情を浮かべた。

池村琴子は固まったように立ち尽くし、見透かされたような、不倫現場を押さえられたような気まずさを感じていた。

考え直してみれば、もう離婚したのだから、友人と食事をすることは誰にも迷惑をかけないはずだ。

池村琴子は微笑んで、靴を並べながら彼らに言った。「どうぞ入って」

南條夜は彼女を見つめ、優しく言った。「先に友達の相手をして。鍋にまだ料理があるから、私は先に用事を済ませるよ。何かあったら呼んで」

そう言って、山本正博に軽く一瞥を送った。

「上流階級にも馴染めて、料理も上手で、稼ぎもよくて、イケメンときた。まったく...」安藤静は感心したように連続して頷き、とても満足そうだった。

池村琴子は苦笑いして説明した。「兄が来るように言ったの」

南條夜の熱心さを思い出し、彼女も少し困惑していた。

南條夜が料理をしている時、彼女は手伝おうとしたが、キッチンに入るなり追い出されてしまい、結局料理を運んだり、手伝い程度のことしかできなかった。

料理が出来上がったばかりの時に、安藤静たちが来た。

山本正博は黙したまま、表情は冷たく、喜怒哀楽を読み取ることができなかった。

鈴木哲寧は安藤静に突かれた後、大人しくなった。安藤静は彼を殴る時は容赦がないが、彼は殴り返すことができず、結局口を閉ざした。